ど根性「街路樹」──新宿通りのアボカド
ど根性「街路樹」
会社の近くに、ずっと気になっている街路樹がある。
場所は、新宿通り沿い。「博多天神 新宿御苑店」のすぐ前だ。
このあたりの街路樹は、たぶん「モミジバスズカケノキ」なんじゃないかと思っている。
葉っぱの形に特徴があって、大きくて切れ込みが深く、モミジのようにも見える。
夏には広がった枝と葉がしっかりと木陰をつくってくれて、見た目にも存在感がある。
道路沿いにずらりと同じ木が並んでいて、しっかり手入れされている印象だ。

異質な一本との出会い
そんな整然とした街路樹の列に、一本だけ——明らかに“仲間外れ”がいる。
遠目に見れば、他の木と同じように見える。
背丈も同じくらい、幹もそれなりに太く、剪定の形もきちんと整っている。
でも、ある日ふと近くを通りかかったとき、気になって目を留めた。
「……あれ、葉っぱの形が違うぞ?」
他の木と同じだと思っていたその一本は、近づいてよく見るとまったく別物だった。
葉が丸くて、やや細長く、先端が尖っていて、質感もツヤがあってやわらかそう。
このフォルム、忘れようがない。
そう、これは「アボカド」だ。
10年ほど前、自宅でアボカドの種を水に漬けて発芽させ、育てたことがある。
だから、葉の形や質感には見覚えがある。間違いない、あれはアボカドの木だ。

でも、街路樹としてアボカドなんて聞いたことがない。
ちなみに:アボカドとモミジバスズカケノキのこと
アボカドは、熱帯〜亜熱帯気候を好むクスノキ科の果樹で、葉は丸みのある長楕円形。
果実としては身近でも、街路樹として使われることはほとんどない。
寒さにやや弱く、落葉せずに枝葉を広げる性質があるため、管理に工夫がいるかもしれない。

一方、モミジバスズカケノキは、スズカケノキ属の代表的な街路樹。
フランスやロンドンでも広く用いられる「プラタナス」として知られ、葉は切れ込みの深いモミジ状。
成長が早く、耐寒・耐暑・排ガスにも強い。
剪定にもよく耐えることから、都市部の並木道で採用されることが多い。
つまり、街路樹として見るなら、モミジバスズカケノキは“正規レギュラー”、
アボカドは“本来ならベンチ入りもしていないフリーランス”といったところかもしれない。
どうやってここまで残ったのか
たぶん、もともと正規の木が何らかの理由で枯れたり、伐採されたりして、
一時的に“空席”になっていた時期があったんじゃないかと思う。
そこに、誰かがこっそり苗木を植えた。あるいは、アボカドを食べたあとに種を投げ捨てたのが、
たまたま土に刺さって発芽してしまった——そんな奇跡的な偶然かもしれない。
普通なら、そんな“外様”の木は早々に抜かれるはずだ。
街路樹には植栽計画があり、きちんと管理されている。
種類が揃っていないと見栄えが悪くなるし、剪定や落ち葉対策などの作業も煩雑になる。
けれど、そのアボカドの木は、生き残った。
気づいている人はきっといる
今では他の木と見劣りしないくらいに育っていて、
年に一度はきちんと剪定までされている。
「これアボカドだよね?」と気づいている人は、実は結構いるんじゃないかと思う。
剪定する業者の人も、電飾を飾る時期に作業している人も、
本当は「違う木が混じってるな」と思っているんじゃないだろうか。
それでも、あえて抜かない。
他と同じように手を入れ、他と同じように扱う。
その“見て見ぬふり”というか、“共存の優しさ”みたいなものが、なんだかとても好きだ。
ひっそりと、でも確かにそこに
街路樹というのは、たいてい名前も意識されない。
気にして歩く人なんて、そう多くないだろう。
でも、自分はこの一本だけ、毎回必ず目で追ってしまう。
葉が増えたな、枝が伸びたな、剪定されてスッキリしたな、とひそかに見守ってきた。
それは愛着というより、勝手な応援に近い感情だ。
「今日も元気だな、よかった」と思って帰ることがある。
完全に部外者なのに。
フォーエバー・アボカド
アボカドの木は、誰にもバレていないフリをしながら、堂々と街の中に立っている。
違うのに、そこにいることが許されている。
何事もなかったかのように、列に並び、風に吹かれている。
そういう在り方が、とても好きだ。
剪定してくれている人たち、ありがとう。
「あれ、違うぞ」と思いながらも抜かなかった誰か、ありがとう。
この木が、このまま静かに暮らしていけるよう願っている。
フォーエバー・アボカド。
街に咲いた、ど根性の一本。
きっと今日も、誰かの目に映っている。


