大切なことは「ビックリマン」から教わった。

ビックリマンが教えてくれた、社会を生き抜く知恵

近所のスーパーでビックリマンチョコが売られていた。「40th Special Edition」の文字。そうか、「ヘッドロココ」を引き当てて喜んでいた時代から、もううん十年が経つのか。と、ちょっとノスタルジックな気持ちになった。

当時を思い出すと、いろんな事件があって、そこからたくさんの“大人になるための知恵”を学んだ気がする。

欲望のまま買い占めてはならない

ビックリマンチョコは極度かつ慢性的な品薄で、基本的に店頭にない。そして入荷して並んだ瞬間に売り切れる。

そのため、いつからか学区内のスーパーや駄菓子屋さんには「1人3個まで」というルールが設けられた。「大人買い・箱買い」は禁止事項。これを破った者はとんでもないヘイトを集め、しばらくのあいだ“卑怯者”として扱われた。

自分のことしか考えず、買い占めを行う者には相応の報いがあるべきだ。そこに情状酌量はない――そんな感覚が根づいた世代だ。現代で転売ヤーへの嫌悪感が強いのも、あのときの原体験があるからかもしれない。

情報ネットワークの大切さ

販売店の情報を筆頭に、「情報を制する者がビックリマンを制す」時代だった。ただし、当時は携帯電話もネットもない。情報源はテレビ、漫画雑誌、そして町内の足パトだった。

公園を梯子し、自転車で巡回し、偶然出会った顔見知りとその場で情報を交換して、また別れる。足で稼ぐ日々。

そのなかで、情報の信頼度を見極める術も自然と身についた。幼稚園児は意味がわからないし、上級生はフェイクニュースを流すことが多い。虚言癖のある同級生の話も「さしすせそ」対応(=さすが、知らなかった、すごいね、センスある、そうなんだ…で流す)でやり過ごす。

誰が発した情報か、どんな背景を持つのか。それを考えずに飛びつくと痛い目を見る。これは今も変わらない。

後先を考えないヤベー奴がいる

限られた入手数だけでは満足できず、シール交換が盛んだった。自分より年下をターゲットに、相手の無知に漬け込んで不平等な交換をしたり、目を離した隙にすり替えたり盗んだり。そんな“ヤベー奴”も一定数いた。

当然、悪行はすぐにバレる。「賞金首」として、罪状とともに情報ネットワークで共有され、信頼回復は絶望的。だが、毎年数人は新たな“要注意人物”が現れた。

目先の欲望に負けて、将来的な信頼や関係を投げ捨てる人間がいるという現実。その存在を知っておくことは、大人の社会でも必要な視点だ。

食べ物を粗末にしてはならない

シールだけ欲しくて、お菓子(ウェハースチョコ)を食べずに捨てる事件が多発。ついに先生がブチ切れ、学級会からの全校集会へと発展した。包装袋のポイ捨てまで含めて、かなりの大事になったようだ。

環境を大切に…とまでは当時の我々は言わなかったが、「食べ物を粗末にすると大人はガチで怒る」ということは学んだ。

ちなみに、食べずに捨てたやつは「1人3個ルール」にも違反していたので、併合罪で社会的ダメージが大きかった。

今に活かせる、あの頃の教訓

ビックリマンは、単なるシール付きのお菓子ではなかった。そこには、社会のルール、善悪の境界、信頼の重さ、情報リテラシーといった、人生を生き抜くうえで大事な要素が詰まっていた。

情報の信頼性、資源の分配、公正な市場、持続可能性。子どもの世界で学んだ感覚は、現代の社会にもそのまま通用する。いや、通用させねばならない。

買い占めや転売、フェイクニュースや環境破壊が絶えないこの時代。あの頃の“古きよき教訓”を、今こそ思い出してみてもいいのかもしれない。

フェアトレードは次に良い取引をするための先行投資だ。 そして、信頼は「今ここ」で損得勘定を超えて築いていくものだという実感を、我々は駄菓子屋の前で得ていたのだと思う。

補足

ビックリマンチョコとは?

ビックリマンチョコは、ロッテが発売したウエハース菓子で、特典として封入されたシールが大ブームを巻き起こしました。特に1980年代の「悪魔VS天使シリーズ」は社会現象化し、子どもたちを中心にコレクション熱が高まりました。シール目当てに大量購入され、お菓子だけが廃棄されるなどの問題も話題となりました。

駄菓子屋とは?

駄菓子屋(だがしや)は、子ども向けの安価なお菓子やおもちゃを売る小さな個人商店です。昭和から平成初期にかけて、地域のコミュニティとしても機能しており、子どもたちの放課後の社交場でもありました。現在では数が減っていますが、懐かしさやレトロブームから再評価されつつあります。

買い占めとは?

買い占めとは、特定の商品を他人よりも先に大量に購入し、市場から一時的に枯渇させる行為です。需要が高まるタイミングで起こりやすく、価格の高騰や品薄を引き起こす原因ともなります。ビックリマンチョコのような人気商品のブーム時には、子どもよりも大人が買い占める事例も多く見られました。

転売ヤーとは?

転売ヤーとは、人気商品を購入し、それを定価より高く売ることで利益を得ようとする人たちを指す俗語です。希少なチケットや限定商品を対象にすることが多く、特にインターネット上のフリマアプリやオークションサイトで問題視されています。正規の購入者に商品が行き渡らなくなる原因ともなります。

フェイクニュースとは?

フェイクニュースとは、事実でない情報をニュース形式で流すことを指します。SNSなどの拡散力が高いメディアを通じて、意図的または無意識に誤情報が広まり、社会的な混乱を招くことがあります。ビックリマンブーム当時も、入荷日や販売規制にまつわる根拠のない噂が子どもたちの間で出回ることがありました。

シール交換とは?

シール交換は、ビックリマンシールなどのコレクションアイテムを他人と交換する遊び方です。学校や公園などで自然発生的に行われ、子どもたちにとっては交渉術や駆け引きを学ぶ機会でもありました。ただし、人気のあるシールの偏りや価値の違いがトラブルの原因になることもありました。

フェアトレードとは?

フェアトレードとは、生産者に対して適正な価格を支払い、持続可能な取引を行う仕組みです。主に途上国の農産物や手工芸品で導入されてきました。シール交換などの文脈では、価値の釣り合いを意識した「対等な交換」への姿勢として、ある種の“フェアトレード精神”が子どもたちの間にも求められていたとも言えるでしょう。

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